日産自動車の元会長・カルロス・ゴーン氏が、保釈期間中に、中東のレバノンを出国したという声明を出しました。
ゴーン氏は、現在保釈中で、海外渡航が禁止されており、弁護士がパスポートを管理されていました。
にもかかわらず、ゴーン氏が、今回の逃亡劇を成し遂げたため、なぜ出国することができたのか?、その逃亡経路について、様々な報道が飛び交っています
今回は、現在報道されている内容をもとに、ゴーン氏の逃亡劇(経路)をわかりやすく整理してみました。
ゴーン氏の保釈条件のまとめ
①住居は東京・港区の一戸建ての住宅に制限
②住居の玄関には監視カメラを設置し、録画の内容は定期的に裁判所に提出
③携帯電話は弁護士が提供したインターネットに接続できない1台のみを使用し通話履歴を裁判所に提出
④海外への渡航が禁止され、パスポートは弁護士が保管
⑤3日以上の旅行は裁判所の許可が必要
⑥妻キャロル氏との接触は裁判所の許可がないかぎり原則禁止
上記のとおり、ゴーン氏には、「海外渡航の禁止」「パスポートは弁護士が保管」という条件により、出国は認められていませんでした。
ゴーン逃亡劇(経路)の全体像
【2019年12月29日昼ごろ】
指定住居(東京都港区)から一人で外出
【2019年12月29日夜】
関西国際空港着。何らかの不正な手段で保安検査、税関、出国審査を通過
【2019年12月29日午後11時すぎ】
関西国際空港からプライベートジェットで出国
【2019年12月30日午前5時過ぎ(トルコ現地時間)】
トルコ・イスタンブールのアタチュルク空港到着。
レバノン行きの別機へ乗り換え。
【2019年12月30日】
レバノン入国
【2019年12月31日】
ゴーン被告声明文発表
ゴーン逃亡劇(経路)の詳細
【2019年12月29日昼ごろ】
指定住居(東京都港区)から一人で外出
ゴーン元会長は先月29日の昼ごろに東京都内の住宅を1人で出る様子がカメラの映像から確認(NHK NEWS)
ゴーン被告が逃亡した先月29日午後3時前、東京・港区にある防犯カメラが捉えた映像では、ゴーン被告とみられる人物は全身黒ずくめで帽子をかぶっています。捜査関係者への取材で、ゴーン被告は撮影された時間帯に同じ服装で自宅から港区内のホテルに向かったことが確認されています。
(テレ朝 news)
【2019年12月29日夜】
関西国際空港着。
何らかの不正な手段で保安検査、税関、出国審査を通過
ゴーン氏の渡航は制限されており、当たり前ですが、まともに出国審査を受けたら、見つかってしまいます。
また、NHKの報道によれば、今回の出国に際し、「出入国在留管理庁のデータベースには、ゴーン被告が日本から出国した記録はなかった」とのこと。
ということで、何らかの不正な手段により、ゴーン氏は、保安検査、税関、出国検査の網をくぐり抜けたのではないか?とみられています。
何らかの不正な手段については、2つの報道がされています↓
①偽造パスポート説
レゼコー紙は31日、ゴーン前会長周辺などの情報として、ゴーン前会長は日本で出国が見つからないように、小規模の空港を選んでプライベートジェット機に乗り込んだ上で、偽造パスポートを使って日本を離れた可能性があると報じた。
引 用:12月31日朝日新聞「『大脱走』 仏メディア、ゴーン被告出国に驚き伝える」
偽造パスポートにより、別名で出国したという説です。
②黒いケースに身を隠して出国説
画 像:ゴーン氏が隠れて出国したとされる黒いケース(ウォールストリートジャーナル)
ケースは音響機器を運ぶためなどに使われるもので、日本からトルコ・イスタンブールに向けて運航されたプライベートジェットに残されていたということです。このケースの底には、ゴーン氏が息が出来るように穴が開けられていたと報じられています。
(2020年1月6日 1時30分 TBS NEWS)カルロス・ゴーン被告がひそかに出国する際に利用したとみられるプライベートジェット機の機内に持ち込まれた荷物は、関西空港でX線による検査を受けていなかったことが関係者への取材で分かりました。
(2020年1月5日 5時9分 NHK NEWS)
上記2つの報道のうち、現在「黒いケースに身を隠して出国説」が有力視されています。
音響機器用の黒いケースに身を潜めて、空港の各種検査を通過し、プライベートジェットで出国したという流れです。
NHKの報道によると、関西空港では、このケースX線による検査をうけていなかったとのこと。
X線検査を受けなかった理由について、NHKでは次のとおり報道しています。
関係者によりますと、プライべートジェット機の場合、運航する会社や機長の判断でX線による荷物の検査を行わないことはたびたびあり、当日の様子について空港関係者は「ケースがかなり大きく、X線の機械に入りにくかったこともあって検査はしなかった」などと説明しているということです。
(2020年1月5日 5時09分 NHK NEWS)
ということで、プライベートジェット機の緩い検査網を利用されてしまった形ですね。
なお、レバノンの主要テレビMTVの報道によれば、出国に際し、民間警備会社のようなグループの支援を受けたとされています。
【2019年12月29日午後11時すぎ】
関西国際空港からプライベートジェットで出国
旅客機が発信する位置や高度の情報をもとに飛行コースを公開している民間のホームページ「フライトレーダー24」によりますと、この(プライベート)ジェット機は、先月29日午後11時すぎ、関西空港を飛び立っています。
NHKが関西空港に設置したカメラの映像には、同じころ、1機のプライベートジェットが駐機場を出発して滑走路に向かう様子が映っています。
(2020年1月3日 16時16分 NHK NEWS)
2019年12月30日午前5時過ぎ(トルコ現地時間)
トルコ・イスタンブールのアタチュルク空港到着。
レバノン行きの別機へ乗り換え。
トルコ・メディアは4日、ゴーン被告が隠れていた箱がトルコの空港の格納庫内で載せ替えられたと伝えた。
ゴーン被告を乗せた飛行機には3つの音響機器の箱が積んであり、このうちの1つだけが空港にある格納庫の中で別の飛行機に載せ替えられたという。
(2019年1月6日 1:01 NNN)
ということで、ゴーン氏は音響機器用の黒いケースに隠れたまま、レバノン行の別の飛行機に乗り換えたとみられています。
なお、トルコの捜査当局は、これまでに逃亡を手助けしたとして5人を逮捕したとのこと。
トルコ・メディアによると、逮捕された男のひとりは、「(黒いケースの中に)誰が入っているかは知らなかった」と供述しています。
1月6日現在の報道によれば、次のような経緯が明らかになっています
- 2019年12月、異なる利用客からトルコの民間航空会社MNG航空に対し、2件の予約があった。
- 1件は「アラブ首長国連邦(UAE)のドバイ(Dubai)発大阪行きと大阪発トルコ・イスタンブール行き」
- もう1件は「イスタンブール発レバノン・ベイルート行き」
- どちらのフライトの公式文書にもゴーン氏の名前は記載されていなかった
- ただし、MNG航空の声明によると、同航空の従業員の一人がゴーン被告の名前が記録に残らないよう文書を改ざんしたことを認めた
- MNG航空は、同社の航空機が違法に使用されたとして、刑事告訴した
2019年12月30日 レバノン入国
レバノンの治安当局者は、元会長とみられる人物がレバノンに入国した際、元会長の名義のフランスのパスポートが提示された…
(NHK NEWS)
ということで、ゴーン氏は、自身名義のフランスのパスポートを提示し、入国しています。
レバノンのセルハン暫定法相は、メディアの取材に対し、「彼は合法的な書類を持ってレバノンに入国した。レバノンの領土内において、いかなる法律も犯していない」と述べ、ゴーン氏の滞在に法的な問題はないという認識を示しています。
保釈期間中は、弁護団がゴーン氏のパスポート管理をしていました。
では、なぜ、ゴーン氏が、自身のパスポートを携帯していたのでしょうか?
この経緯は、メディアの報道によると、次のとおりです。
- 2019年4月に保釈時には、弁護団がゴーン氏の国籍があるフランス、ブラジル、レバノンのパスポートを保管
- このうち、フランスのパスポートについては、2通のパスポートの発行を受けていて、いずれも弁護団が保管
- しかし、2019年5月、ゴーン氏にパスポートの携帯義務が生じたため、弁護団が保釈条件の変更を請求
- フランスのパスポート2通のうち1通を鍵が付いたケースに入れた状態で、(ゴーン氏が)携帯することを裁判所が認めた
2019年12月31日 ゴーン被告声明文発表
「私はいまレバノンにいます。
もはや私は有罪が前提とされ、差別がまん延し、基本的な人権が無視されている不正な日本の司法制度の人質ではなくなります。
日本の司法制度は、国際法や条約のもとで守らなくてはいけない法的な義務を目に余るほど無視しています。
私は正義から逃げたわけではありません。
不公正と政治的迫害から逃れたのです。
いま私はようやくメディアと自由にコミュニケーションできるようになりました。
来週から始めるのを楽しみにしています。」
出 典:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191231/k10012232821000.html